大げさな愛の表現がバズり、まだ数回しかやりとりしていないのに『運命の相手』と決めつけてしまう時代、恋愛の「熱量」は魅惑的でありながらも混乱を招くものになっています。

すべての激しい恋が本物とは限りません。この文章では「ラブボミング」（過剰な愛情表現で相手を圧倒する行為）という言葉の意味を紹介し、真の情熱との違いを見分ける方法を探っていきます。

ラブボミングとは何か

新しい恋の始まりほど心を浮き立たせるものはありません。

途切れないメッセージ、絶え間ない褒め言葉、そして自分が誰かにとって特別な存在になったように感じる瞬間。けれど、そんな高揚感をともなう恋の熱も、近年では「ラブボミング」と呼ばれることがあります。
ラブボミングとは、出会ってすぐの段階で、相手に過剰な愛情や贈り物、褒め言葉、関心を立て続けに注ぐ行為です。目的が純粋な愛でない場合もあり、短い時間で相手を夢中にさせ、信頼関係や境界ができる前に感情的に依存させてしまうことがあります。

この言葉はもともと、カルト集団の勧誘方法を分析した心理学の研究に登場しました。リーダーが極端な愛情表現を使って信者を引き込む手法を指していたのです。その後、この概念は恋愛の世界に広まり、愛情を使って相手を操作する行為として定着しました。いまではティックトックやポッドキャストなどを通じて一般にも知られるようになりましたが、その意味はしばしば曖昧に扱われています。

そのため、恋の熱量が高まる一方で、どこか戸惑いを感じる人も増えています。

デジタル時代の恋愛は加速する

混乱の一因は、オンラインでの恋愛がやり取りのすべてを加速させていることにあります。絶え間なくメッセージのやりとりが1週間続くと、従来の1か月分の関係のように感じられることもあります。「ソウルメイト」動画や派手なサプライズ演出が拡散される中で、以前なら警戒されていた強烈な愛情表現が「普通」と見なされるようになりました。こうした状況では、本当に心を惹かれているのか、それともラブボミングなのかを見極めるのがますます難しくなっています。

ラブボミングのサイン

心理学者たちは、いくつかの典型的な兆候を挙げています。

• 出会って間もないのに過剰な愛の言葉を口にする（「こんな気持ちは初めてだ」など）
• メッセージや電話の頻度が極端に多い、即時の返信を求める
• 結婚や同棲、将来の話などを早い段階で持ち出す
• 「心配だから」といった言葉で行動を監視しようとする

最初はこのような注意が嬉しく感じられるかもしれません。しかし次第に、自分のペースや境界が無視され、相手の熱量に押しつぶされていく感覚が出てきます。

本物の情熱とは

もちろん、すべてのスピード感ある恋が有害というわけではありません。もともと情熱的な性格の人もいますし、文化的な違いによって感じ方が異なることもあります。
ラブボミングと真の情熱を分ける鍵は「持続性」です。本物の愛情は相手のスペースを尊重し、ゆっくりと深まっていきます。ラブボミングは燃え上がるように始まりますが、やがて冷めたり、支配的な行動に変わったりすることが多いのです。

アルゴリズムが「強さ」を好む理由

ラブボミングという言葉が広まった背景には、SNS上で「極端さ」が注目を集めやすいという事情があります。劇的な恋愛や破局の動画は視聴者の関心を引きつけ、アルゴリズムに乗りやすいのです。私たちはその強烈さに惹かれながらも、同時に恐れています。
その結果、どんな強い感情も疑ってしまうようになります。初デートで花束をもらったら、それは「優しさ」なのか「操作」なのか。オンラインの議論が過剰な警戒心を生み、情熱と危険の境界線を曖昧にしてしまうのです。

自分を守るためにできること

大切なのは、情熱を避けることではなく、感情的な知性を持つことです。

• 自分の身体の感覚を確認する。ワクワクしているのか、それとも圧迫感を覚えているのか。
• 早い段階で境界を設定する。本当に誠実な相手なら、それを尊重します。ラブボマーは逆に押し付けてきます。
• 一貫性を見極める。真の情熱は派手な行動ではなく、日常の中での思いやりに表れます。

恋愛の喜びを取り戻す

ラブボミングへの警戒が、恋愛の喜びそのものを奪ってはいけません。スピーディーな出会いから始まる真剣な関係も存在します。重要なのは、強さを拒むことではなく、「あなたを高める愛」と「あなたを圧倒する愛」を見分けることです。

ラブボミングは確かに現実の問題ですが、それが恋愛のすべてではありません。本物の情熱は贈り物のようなものです。その火があなたを温めるのか、燃やしてしまうのかを見極めることが大切です。ラブボミングが流行語になっても、真に価値があるのは「距離感」「誠実さ」「尊重」という3つのバランスです。情熱は、美しくもありますが、境界を越えないときにこそ輝くのです。